土佐清水のウツボ漁は、延縄漁
2月10日、前夜の雨も上がり変わって押寄せてきたのは日本列島をすっぽり覆うほどの大寒波。春を前にしたこの季節、天気はめまぐるしく変わり気圧の谷間では雪が降ります。南国でも2月は雪が降りやすい季節、雪が降ると土佐人は春がもうそこまで来たことを実感します。寒波の中でも土佐清水の最低気温は4度。高知市中心部よりは、4度ほど高め、
でも前日の土佐清水最低気温はなんと11度でした。
AM5:00出船です。幸いな事に風は港より風速2m/秒ほどで、外海に出ても海は凪状態でした。実は土佐清水のウツボ漁の仕掛けはクエ漁と同じ延縄漁。クエ漁をしながらウツボを仕留めるのです。

【延縄仕掛け、1鉢の構造】
釣針はメジカの吻(口の先端に刺す)。海中投入後の水の抵抗を軽減し仕掛けが絡まない工夫をしています
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漁場となるのは、水深60mほどの底が岩礁地帯。複雑に入り組んだ岩礁地帯の岩の隙間がウツボの棲家です。クエとの違いはウツボの場合比較的生息数が多い事と、一匹当りの縄張りか狭く餌が豊富にあれば時として群れて生息しています。水族館でも人口的に作られた塩化ビニールの管にウツボが群れて入っているのをご覧になられた経験がお有りではないでしょうか。ウツボは又、それほど規模の大きくない岩礁地帯にも棲んでいます。
驚くべき大仕掛け
クエと同じ仕掛けを使用するので、ウツボ延縄漁の仕掛けは当然その魚体にはそぐわないほどの大仕掛け、しかしそれには、ウツボならではの特徴に対応する秘策もあるのです。
漁場にはAM6:00に到着、漁は日の出と同時に開始されます。
漁場では先ず、仕掛けを投入する前に、風向、風速、潮の流れを丁寧に測ります。
熟練の勘と技により、巧みに60m下のポイントに思い通りに仕掛けを落としていくのです。
仕掛けは漁礁となる、瀬際から瀬上にかけて複数鉢投入します。
先ず浮子(アバ)となる大きな、発泡スチロールを投入します。浮力は30kgの重さにも耐えるくらいの大きなもの、図の(ホ)。
その直下に6kgほどの沈子(イワ)を直結、形状は漁礁での漁に船を固定する碇と同じで、万一、沈子が漁礁に引掛かかってもウインチで強く引張ると、縦綱(ハ)が切れない強度があれば碇先端が伸び外れる仕掛けです。
沈子を投入した後は、縦縄から横に伸びる幹縄(イ)に暖簾状に同じ長さに吊り下げた枝縄(ロ)の先にあるネムリ形状の針(ニ)に餌となるソウダカツオ(メジカ)の切り身を刺し、幹縄の沈んでいくしもり具合を見ながら枝縄の針がもつれないように手際よく絶妙のタイミングで餌のついた針を連続して投入していきます。一鉢全ての針を投入した最後尾に投入時と同じ、浮子と沈子を投入し延縄を固定します。三木さん親子の延縄は、幹縄の長さは約700m、枝縄は水に強い繊維を編んだ“枝もと”3mとナイロンの“ちもと”(釣針の括りめとその付近)1.5mの先に1鉢合計で66本の針が付いており、針と針との間隔は約10mです。
一度の漁で5鉢の仕掛けを投入。餌の付いた針の本数は330本となります。
ちなみにナイロンの号数は120号
通常私たちが、大物釣りに使うナイロンハリスは鯛釣りで5号、ブリ釣りで8号、鰹釣りで12号程度、120号のハリスは300kgのマグロの一本釣りにも耐えうる強度です。
魚体だけで判断すれば1/10の大きさのナイロンハリスでも良いのですが、ウツボは非常に歯の鋭い魚、金属のワイヤーをちもとに使用する場合もありますがナイロンハリスを使用する場合はこれ位が必要な大きさであるとも言えます。更に魚には口腔に見える捕食用の歯とは別に、喉に咽頭顎という食物を砕く第二の歯がありウツボはこれも鋭く強力です。
愛すべきウツボの生態
海のギャングとも称せられるウツボ。他の魚の確保した餌を有無を言わさず横取りする獰猛な魚です。自然界ではウツボはあまり天敵がおらず、ウツボを天敵とするタコも自らがウツボに擬態して他の天敵から逃れるほど、海の中ではウツボはやりたい放題のやんちゃ坊主。ものに対する警戒心をあまり持ち合わせておらず、初対面のダイバーからも手渡しで餌をもらうほど大胆な行動に出ます。120号のハリス(釣糸)というより、魚でありながら釣りの仕掛けの存在自体を全く気にしていないようです。
この延縄漁で釣れる魚は、大本命であるクエ、本命であるウツボ、仕掛けが底に沈んでいく時には、ブリやヒラマサ、カンパチといった青物、仕掛け着底後にはクエ以外のハタ科の魚、ヒラメ、サメなどが釣れます。
海の忍者?
カンコを覗くと殆どのウツボは体をくねらせあばれていますが全て生きており、なんとそれは、のたうちまわりながら口や体内に残った針を忍者のように吐き出しているのです。
驚くほどたくましく、そして恐ろしい風景。ウツボの生命力みなぎるパワー自体が、まさにこの魚の個性ある食味でもある事を実感した瞬間でありました。港へ帰る途中で、多くのウツボが体に付いた異物(釣針)からまるでなにもなかったかのように逃れていました。
陸揚げと同時にウツボは生きたまま競りにかけられ、港のすぐ前にあるカネモリ水産で、たたき、干物用として活〆され時を置かず一時加工されていきます。
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